四丁目の部屋

この部屋に住み始めてから、丸三年が経った。

月並みではあるが、その間色んな変化があった。

人生で初めてホームシックになったり、自分の中の常識では計れない人に出会ったり、

転職もしたし、両隣の住人が変わりもした。

たったの三年だけれど、それでも確かに三年間過ごしたと思える時間だった。

自分の生活にはたくさんの変化があったけれど、

六畳一間と台所の、決して広くないこの部屋は、引っ越してきた当初とさほど変わっていない。

机と本棚があるだけの、たったそれだけの部屋なのだ。



いちばん落ち着くことのできる場所は、実家ではなく、この部屋になった。



この部屋から出かけて、この部屋に帰ってくる。

あと何回、それを繰り返すだろう。よほどのことがない限り、ここへ住みつづけると思う。



アースの虫除けが、昨晩切れた。

仕事帰りに薬局でつめかえのカートリッジを手に取ったが、棚に戻した。

あの部屋には、キンチョーの蚊取り線香の方が似合う。

蚊取り線香の缶カラを手に、緑道を歩いて帰る。

あの部屋はわたしにとても似合っているし、わたしもあの部屋に似合っている。

坂を上った四丁目の部屋で、四年目の夏が始まろうとしている。