夏休み子ども科学電話相談

『ドミトリーともきんす』を読み終えた翌朝、

ラジオから夏休み子ども科学電話相談が流れてきた。

今朝いちばん興味を惹かれたのは、

魚の年齢を知るには鱗を紅しょうがの汁に浸すとよいというもの。

自然科学に心躍る季節がやってきた。

 

毎年、この放送を楽しみにしている。

電話口に現れるのは、自分の身の回りにあふれているとある不思議に気づいた子どもたち。

そしてその不思議について答えてくれるのは、専門知識を持ったその道の先生たち。

子どもたちの質問はいつもまっすぐで、それは時に先生たちを唸らせ、困らせることがしょっちゅうある。

けれど、電話口を通して問いかけられる「なんで?」に応える先生たちも、子どもたちと同じくらいまっすぐで、一生懸命説明するあまり子どもたちには分からない難しい言葉まで出てくることもしょっちゅうある。

そういったときに司会を務めるアナウンサーが先生の言葉をかみ砕き、子供たちにそっとバトンを渡してくれている。

直接、目の前でお話すれば一瞬で解決してしまうような受け答えの時もある。

たとえば今朝も「おうちにある水槽はどれくらいの大きさなのかな?」と聞かれた子どもが、しばらく迷った挙句「中くらい」と答えた。

これだって目の前にいれば手を広げて「このくらいだよ」と言えば、すぐに分かることなのだが、それができないのでラジオを聴いているこちらは思わずぷっと吹き出しながら、小学一年生の男の子が中くらいというのだからきっとこれくらいかなーとか、いろいろ想像を巡らせながら聞き入るのだ。

ラジオの向こうで繰り広げられる不思議の数々には、すでに知っていることもあれば疑問にすら思ったことのなかったものもたくさんある。

しかし、そのひとつひとつが、先生の言葉を通すと新しい驚きを与えてくれる。

子どもは多感だから、大人よりもたくさんの不思議について気づくことができる。

いいや、そうじゃないと思う。

すでに、ここに子どもたちと同じくらい身の回りの不思議に気づいて、それについて知りたいと好奇心を持ち続けた先生たちがいる。

わたしたちは普段、もっと他の事に気を取られてしまっているだけで、不思議について気づくことのできる感性も、好奇心も、遠い昔に置いてきてしまったわけではない。

 

子どもたちには夏休みという「なんで?」を解決するためのたくさんの時間がある。

大人たちにはその時間はないけれど、代わりに「なんで?」を解決するための言葉と探す能力がある。

だから、子どもたちも大人たちも同じだ。

 

ともきんすに出てきた四人の学者、朝永振一郎牧野富太郎中谷宇吉郎湯川秀樹も、自分の気づいた不思議について問いかけ続けた大人だった。

自宅と職場を往復するだけの道すがらにも、きっとたくさんの不思議が落ちている。

明日もラジオを聴きながら、わたしの歩く道にも不思議が落ちていないか、目を凝らしてみることにする。

きっと、スマートフォンの画面を通さなくたって、それぞれの道すがらに不思議はいくらでも落ちている。