突風の吹き抜けたあと
もうすっかり季節は春になったけれど
そのもう少し前の、早春といわれる季節がいちばん好きである。
朝と晩がまだ少し肌寒く、
あたたかい日差しの中にも突風が吹き荒れるような、
あの季節が一番好きだ。
冬の間、息をひそめていたものたちが目を開け
新しい季節が始まったことを色と匂いで教えてくれる、
そんなこの季節はとっても嬉しくなる。
すべてをなかったことにするわけではないけれど、
様々なものが芽吹いてくるのを見ると、
自分自身もまた仕切り直しをすることが出来る。
いいことも、わるいことも、
すべてを一度スタートラインに戻して、
それから始めることが出来る。
歳を重ねながらも、生まれ変わるような気持ちになる。
早春は、意外と優しくない。
頬を撫でるような、そよ風が吹くのはしっかり春になってから。
そこら中を掻き乱し、巻き散らかすような突風が吹き抜けて行ったあとは、
草花も、日の光も、わたしも
むりやり叩き起こされたようで目をぱちくりしてぼんやりしてしまう。
でも、そのあとにいそいそと自分の仕事に取りかかり、
一気に景色が色づくのだ。
それが、春になるのだ。
毎年思う、
ああ、なんていい季節に生まれてきたんだろう。