ドア向こうの彼女


先日、電車に乗っていてふと顔を上げるとドアの向こうに見覚えのある顔があった。
しばらく「誰だろうな、」と考えていて、
先月一緒に撮影のアルバイトをした人だということを思い出した。
声をかけようかとも思ったが、その時名前を忘れてしまっていることに気づいた。
ドア向こうの彼女はそのまま電車に乗り込み、
私は私でまたマフラーの中に顔を埋めてヘッドホンの音楽に戻っていく。
実際、私のいたドアと彼女のいたドアは少し離れていたので
「遠くて見えませんでした」、と思うことにした。


「とおくてよくみえない」
現在、横浜美術館で会期中の美術家・高嶺格の個展。
高嶺格は一応彫刻学科の出だけども、その作品はずいぶんと多種多様で、
今回はそんな高嶺さんの最新作から過去の代表作まで見れるずいぶん画期的な展覧会。
高嶺格の作品がこんなにまとまって展示されるのは、おそらく始めて。


壁に直接粘度でカタチづくられた作品とか、
暗い部屋に入ってぼんやりと奥に見えるライトが照らす文字を懸命に追う作品とか、
最新作は刺繍や毛布といったファブリックが多かった。


展覧会を見終えてから、今年の横浜トリエンナーレのアートディレクターとのクロストークを見に行く。
高嶺さんもアートディレクターの方も、司会の学芸員さんもなんだか疲れていて話がなかなか弾まない笑
なんでも開場の直前まで作品の設置でばたついていたようで、
「いま、普通に床に何も残ってなくて展示されてるのが不思議だ」とおっしゃっていた


始めて高嶺格の作品を見たときほどの衝撃はなかったものの、
高嶺さんの遍歴を知ることができ、また新しく出会えた作品も多かったので楽しかった




お時間のある人は、ぜひ